ジグザグ!

殻を破り翔び発つ者たち/ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』最強の場所

影山に対する彼の姿を見て、彼はずっとこのままなのだろうかと思ったことがありました。

何の因果なのか、圧倒的な才を持った影山という後輩が現れて以来、及川はどこかでずっと劣等感を覚えていたように思います。
けれども当の影山は「及川さんには敵わない」と言って及川に憧れて追いかけます。そんな影山のことを、わたしはとても残酷な子だと感じることもありました。

及川徹は天才ではない。
監督も彼のことをそう評しました。
きっと監督以外の人たちからも言われていたかもしれないし、及川は自分でもそうだと思っていたはずです。別に天才になりたかったわけじゃないと思います。けれど、自分が努力して得られるものと天から与えられるものは全く違います。
天才への憎しみや憧れ、劣等感は相当のものだったと思います。
及川が飄々と振る舞っていても隠しきれない翳があるように見えるのは、そういった内面にぐちゃぐちゃしたものを抱え込んでいるように思えたからかもしれません。

そんな彼が殻を破ったのがこの試合でした。
熾烈な試合の中で、及川は自身に向き合って、悟って、そして殻を破りました。
才能は開花させるもの、センスは磨くもの。
30歳になってもないかもしれない。ないと思ったら一生ない。
そう言った彼は、必死に走って、その先にあった机と椅子に突っ込んで、すぐに体勢を立て直してボールを追います。
殻を破ろうと必死に殻の中で暴れているように見えるこの場面がわたしは大好きです。命を燃やす及川がとても美しいのです。

そうして、及川は試合の最後の最後で才能を開花させました。
才能を開花させるのも才能だと、わたしは思います。
そして、岩泉の存在なくしては成せなかったし、対戦相手に影山が居なければ成せなかった、最高のタイミングでした。
影山の目には、はじめから翼を広げている及川が見えていたのかもしれません。

そんな及川が影山の他に毛嫌いしている人物、決勝戦の対戦相手、白鳥沢学園主将の牛島若利。
表情が乏しく口数も少ないくて、何を考えてるのか読み取りにくい。はっきりと分かることは、とにかく強いこと、圧倒的な実力を持っている選手ということです。
これまで白鳥沢のメンバーはウシワカしか登場しません。出てきたと思えば相手を怒らせます。簡単に言えば嫌な奴です。
けれどこの決勝戦では、ウシワカがただひたすらバレーが好きなだけのひとりの選手であることが分かります。
チームを率いて全国を目指していて、理想の選手像になるために実現のために努力をしている、ひとりの男子高校生で、バレー選手です。

俺は
俺達が勝つ事を疑わない
でも 今 初めて 明確に
お前を叩き潰したい 


そんな彼は、感情を露わにしました。今まで数えきれない試合をしてきた中で、初めての感情がウシワカに芽生えたのです。明らかな変化でした。そして、初めて叩き潰したいと思った相手を叩き潰せなかった。けれど、大きな変化を彼にもたらしたと思います。

及川がどこかで変わりたいと藻掻きながら努力していたとしたら、ウシワカはそうではなく、自分を全肯定した上で努力していた所に、この試合を通して突如目覚めたようなイメージをわたしは持っています。

及川とウシワカ、殻を破ったこの二人は、両翼を広げてバレーを続けていくと思うのです。
及川徹と牛島若利という二人の主将にとって大切な瞬間を、舞台という媒体でも見届けることが出来たことは、わたしにとってとても幸せなことでした。


ポエムはこれにて終わりです。ハイステの話をしましょう。


ハイステという作品を最後に観たのは「勝者と敗者」でした。
ネガティブなことから書いてしまいますが、わたしは演出家や一部キャストとの相性があまり良くないと感じて2作品を見送った経緯があります。
いつでも優しくみんなの成長を見守ってくれているはずの武田先生の「先生像」を逸脱した描かれ方、座長を含めた烏野キャスト数名が大切な台詞に被せてふざけて芝居を壊している様子を見ると、悲しい気持ちになります。
また、余計だなぁと感じたり、よく分からないと感じる演出など、今まで個人的にハイステを観ていて首をかしげた部分は今作でも見受けられ、「次回作があるとしたら改善してるといいなぁ」と思ったことを思い出しました。

とは言えども、わたしは作り手側では無いですし自分の思い通りになるとは思っていません。出来上がったものを観てわたしが思ったことです。なのでその辺りは自分で消化していくとして。今作、楽しいと思うこともたくさんあります!楽しいです!


はじめましての役者が数名。
スガさん役の田中尚輝さん、嫌味も癖も無くてスッと入ってくるお芝居。けれどもさらっとしているだけではなくて情熱も伝わってくる。スガさんにぴったり。しかもめちゃくちゃ動けるんですね。びっくりしました。声も好きです。
あと、女子!谷地ちゃん可愛すぎませんか死にました。ちっちゃい。可愛い。あまりにも可愛い。嘘やろ…可愛すぎる…声まで可愛くてリアル谷地ちゃんでした。


1部の青城戦に時間を取っているので、2部の白鳥沢戦は駆け足でダイジェストのようです。アレもコレも削られてるー!という印象です。白鳥沢戦はそもそもが長いですから仕方ないですね。
白鳥沢の攻略法を掴んできて烏野の中で一番ノッている月島が突き指をしてしまう場面がありますよね。ここ、月島が治療を受けているときにとても悔しそうな顔をしますよね。こんなときに!って。そこで読者はウッ…!ってなりますよね。その場面が無い…あったのかな、記憶に無いです。記憶に無いってことはあまり深く描かれていなかったのだと思うのですが…。「大丈夫きっと負けない」と潔子さんに言われてウス…みたいな感じで退場して普通に試合に戻ってくるので、その間の〜〜〜〜!!!!月島の〜〜〜!!!!焦り〜〜〜!!!悔しさ〜〜〜!!!戻ってきたときの戻ってきた感〜〜〜!!!!じっくり描いて〜〜〜!!!ってなりました。余計な演出省けば描けたと思うので残念。
このように大体は省略されているので「この場面は観たい!」っていう期待はせずに観た方が良いかなと思います。5時間演ってください(みんな死ぬよ)。


白鳥沢の!クオリティが!高い!ので!楽しい!最高!


白鳥沢戦は試合開始の際に客席の通路から歩いてくるんですけど(白鳥沢は下手側通路でした)、五色ちゃんが人差し指👆挙げてドヤサァと入場してくるのでめちゃくちゃ可愛いです。
そんな五色ちゃん、鍛治が怒るとピエーッ!って反応するので観て欲しいです。武田先生がふざけて踊るんですけど…「わ、いやだ!」と思って白鳥沢を眺めてたんですよ。白鳥沢のみんなもその踊りを見てるんですけど、鍛治が「殺す!!!」って怒鳴るんです。下手端の方に五色ちゃんが立ってるんですけど、怒鳴った瞬間ピエーッ!ってなってとても可愛いです。あと、とにかく顔が良すぎて兵器の域です。

頼れる獅音さん!獅音さんが打つとき、イヨ〜〜〜〜ッ!って歌舞伎の掛け声がSEで流れて飛び六方するやん。1回じゃないし。何回かイヨ〜〜〜ッ!やるやん。弁慶だけど。弁慶だけども!!!!原作に細かいわたし、怒ると思うやん?もうね、白鳥沢のいろんなことが省かれすぎてるからちょっとでも白鳥沢にスポット当たると嬉しいから。ありがとねって感じです。

瀬見さんは大事なサーブの場面が体感1秒な感じなので瀬見ファンは乙…ってなりますしわたしも川西寄りのおるぺん(KPOPオタク風に言う)なので悔しいです。やっぱり5時間…欲しいですね。
試合中は舞台に瀬見さんも出ずっぱりですし台詞もありますし、すごく瀬見さん。白布にお小言も言いますし、チームのことすごく大切に思ってるのを舞台を観てて感じ取れました。

天童すぎる天童。そんな彼には天童のテーマがあります。天童が踊ります。ぐにゃんぐにゃん。青城メンバーが天童に扮して一緒に踊ります。青城戦ではずっとプンスコしてた京谷役の北山さんがめちゃくちゃニコニコしてて笑いました。

天童のバキバキに心を折るソングの所が日替わりです。先日、膝歩きしながら首に手を当てて(宇宙人の声真似するときにやるやつ)歌い始めて「膝痛い」って言ってて笑いました。このとき五色ちゃんも「何それおもろ!」みたいなワクワク顔でちょっと膝歩き一緒にしてて可愛かったです。そう、可愛いです。

山形は超〜〜〜〜格好良いです。超カラダが動くんですよ…ビックリ人間ショーです。
山形は男前大賞なのですが、高橋さんの山形も男前大賞です。点を取られたときにチームメイトの背中ぽんぽんってやったりする所がとても自然で山形っぽいな!と思っています。

川西は格好良すぎて心の中で泣きました。格好良いです………悔いなし…。理想の川西です。こんな三次元で理想の川西を目にしてしまって良いのだろうか…と思います…。何セット目かの間に上手奥辺りでイヤホンで音楽聴いてるんですけど、何聴いてるんだろう…WANIMAだったらどうしよう…NICKEL BACKにしてください!

白布はずっと目付きから気の強さが滲んでいてとても良いです。役者さんのSNS見てると朗らかな雰囲気なので、よくあの目付きでずっと芝居をしているなぁと思いました。
バレー経験者なのでフォームがあまりにも自然で観ていてとても楽しい!白布を追っているバレーを見ている感覚になります。

ウシワカは体格がリアルで骨太な感じがとても良いです。こちらもバレー経験者なのでとても動きがナチュラルにバレーやってる感じ。
しかしご本人が右利きとは思えないほど自然に左利きでびっくりしますね…相当左手を動かす練習をされたのではないかと思います。
原作よりもすごく鍛治に任せられているというか、むしろ依存されているのでは?と思うくらい希望を託されているように感じました。
結構強調した演出だったのもあって、鍛治の理想のためにウシワカが利用されているというか…うーんこれだと言葉が悪い…なんて言えば良いんでしょうか。託されすぎではないかなとも思ってしまって。
ウシワカの目指す選手像と鍛治の求めている選手像が合致しているし、ウシワカはウシワカで自分の成し遂げたいことを明確に持っていて動いているだけなので良いんですけどね。ウシワカ、いろんなものを背負っているなぁ…と思いました。好きです。


何回も言うんですけど白鳥沢のキャストが本当に良いんですよ………だからこそ5時間くらいこのキャストでじっくり試合を観たかった…(みんな死ぬよ)。


白鳥沢戦の試合が終わって、観客の前に一列になってお辞儀をする所。天童だけがしばらく上を眺めていて遅れてお辞儀をします。
マイクは入っていないけれど、彼が「さらば俺の楽園」と言っていることが分かります。気付いたときの感動たるや。
白鳥沢のキャストが、白鳥沢のことを大切に思って演じているのが伝わるんです。白鳥沢をこのキャストが演じてくれて、そして自分の目で観ることが出来て本当によかった。幸せな気持ちで満たされながら劇場を出て、ふわふわと家路に着いています。