ジグザグ!

BTS『Blood Sweat & Tears/SpringDay』MV考察

Blood Sweat & Tears

MVを観る上でのポイント

  • ギリシア神話がオマージュされている
  • デミアンがオマージュされている
  • デミアンの主人公「シンクレール」は敬虔なクリスチャンである
  • キリスト教の宗教観も考慮する
  • テヒョンの役割はキリスト教で言うと悪(悪魔やカイン)
  • ホソクの役割はキリスト教で言うと善(天使やアベル
  • 他メンバーは悪を知ったことを表現しているだけで悪に堕ちたわけではない
  • 善悪が混じった世界、悪とされるものは悪ではないという考えがデミアンで描かれている
  • 今いる世界から飛び立つ少年の葛藤をBTSが伝えたい

以上のことをポイントに観ていきます。

Blood Sweat & Tears MV考察

一見、テヒョンが悪魔でみんなが陥落していってソクジンも悪に染まって壊れてしまった、ような流れにも見えるのですが、BTSが伝えたいこととデミアンがリンクしているということなので、わたしはそうではないと思っています。わたしの解釈を書いていきます。
    
ソクジンはデミアンの主人公であるシンクレール、ホソクは善の概念、テヒョンは悪の概念を表していて、また、ユンギ、ナムジュン、ジミン、ジョングクはそれぞれ知らなかった悪の世界を知っていくこと、成長における過程で出くわす様々な誘惑に遭うことの象徴に思えました。

ナムジュンは禁断の酒・アブサンを飲み、日本版ではジョングクに飲ませます。ユンギはジミンを誘うような行動をして、目隠しをされたジミンはそれに抗おうとしますが結局享受します。ジョングクはナムジュンが指に垂らした蝋を口に含みます。また、自身の能力を過信して神に対抗して墜落していくイカロスを模し、また、ナムジュンと同じ部屋で怠惰にベッドに横たわる姿も見受けられます。

しかし、MVではこれらのことを「メンバーが悪に染まった」と表現したいというよりは、「善と相反する世界の存在がある」「善と相反する世界を知ること」ということをメンバーを通して表現しているのだと思います。ソクジンの目を覆う5人の手がありましたが、これらの手はソクジンがもう1つの世界を知らないように守ってもいるようにも見えるし、反対に、成長における過程を邪魔をしているようにも思えました。

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最後に、テヒョンに目隠しをされたソクジンの視界が再び開かれると、黒い羽根が生えた像が現れて、ソクジンはその像に近づいてキスをします。


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この像は黒い羽根のインパクトによって悪魔にも見えるのですが、身体が白いことから、善と悪が統合された存在だと思いました。悪の像であるならば、冒頭に出てきた悪の像のように、身体も黒いのではないかと考えたからです。
善でもあり悪でもある像にキスをすることで、ソクジンはシンクレールのように、善も悪も包括した世界を知ったのです。ソクジンはこれからまた、自己を確立していくために進むのです。右側の顔がひび割れているのは、ソクジンが自分(卵)の殻を破ろうとしていることを表しているのかなと思いました。

このMVでは様々な要素を混じえつつも、少年が殻を破り、自分自身のために成長しようとする過程を描いているという、非常にシンプルな観方をすることで、一見複雑そうなMVも自分なりの解釈に落とし込むことができました。

絵画/彫刻/オマージュ

MVには絵画/彫刻/数々のオマージュが散りばめられていますが、見つけたら楽しい!ってオマケ要素を見つけたテンションでいいと思いました。でないと頭がパンクするので…。

ピーテル・ブリューゲル『叛逆天使の墜落』

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美術館に来たみんなは各々きゃっきゃしてるのですが、ソクジンだけある絵画の前で立ち止まります。絵画はピーテル・ブリューゲルの作品『叛逆天使の墜落』。

ブリューゲルアントウェルペンを拠点に活動していた36歳頃の作品である。本作はキリスト教の世界観に基づく宗教画であり、高慢や嫉妬のために神に逆らい、天界を追放された叛逆天使(堕天使)達と、それを追い払う大天使ミカエルに率いられた天使の軍勢との戦いを描いた作品である。この主題そのものは伝統的な画題で、従来は天使を強調して善の圧倒的勝利を描くものであったが、ブリューゲルの本作は混沌とした画面構成で乱戦の様相を呈し、善と悪、美徳と悪徳のせめぎ合いを描いたものとなっている。 ーWikipediaより引用

この辺りはね、聖☆お兄さんで読んだから知ってる!ミカエルかわいいです。これから描かれるのはこの絵画の主題になぞられています。

悪と善の像

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ちょっと遠いんですけど、奥の方、左側に悪を表現したような像、右側に善を表現したような像があります。左の像は、#7 AWAKEで出てきた趣味の悪い壁紙に似てます。

ピエタ

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ホソクの背後にあるのはピエタ像です。ホソクは弓を構えていて、テヒョンに向かって射るシーンがあります。ギリシア神話に出てくる英雄ヘラクレスを彷彿とさせます。
キリスト教的に考えるとホソクは天国側の善の役割を担っていて、テヒョンは地獄側の悪の役割を担っているのかなと思いました。

ピーテル・ブリューゲルイカロスの墜落のある風景』

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テヒョンが腰かけていたテラスにあるこの絵画はピーテル・ブリューゲルの作品『イカロスの墜落のある風景』。

最後の晩餐

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最後の晩餐を思わせる場面。空がキモい。NIRVANAのHeart-Shaped BoxのMVみたいです。NIRVANAのMVにもキリスト出てきたなぁ。
最後の晩餐といえばユダの存在じゃないですか。ユダは一般的には「裏切り者」「悪い人」ですよね。この座り方関係あるのかなーって思って、ダ・ヴィンチの絵画は横一列なのでうーんってなってなりながら他の絵画を探しました。
ジョット・ディ・ボンドーネが描いた最後の晩餐が横一列じゃなかったので、ユダの位置を見てみました。

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背中を向けて座っている人たちのうち、一番左側の黄色い服を着ているのがユダです。

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ユダが座っている位置にテヒョンが座っていました。偶然かな〜とも思うんですけど考えて座らせてたら面白いな〜と思いました。

イカロス

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天才。
ジェイコブ・ピーター・ゴーウィーの作品『イカロスの飛行』でのイカロスのような体勢になってます。

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ピストリウス

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ピストリウスというのはデミアンに登場し、主人公のシンクレールが成長していく過程で、シンクレールを導く役割を担っていた人物で、オルガン奏者でした。ユンギが悪サイドというわけではなく、シンプルにデミアンのオマージュだと思います。ユンギの導きにより、もう少しでソクジンが善と悪が包括された世界を認識します。

ニーチェの一節

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ソクジンが向かった鏡の上に書かれている文章はニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』からの一節 "踊る星を生むことが出来るためには、人は自分のうちに混沌を持っていなければならない。" です。
自己実現のためには善悪が入り混じった世界を知り生きるべきである、みたいな哲学の思想ですね。

SpringDay

抽象的で分からなかったのですが、ひとつ、この世界で出てきた『Omelas』というワードが気になりました。
『オメラスから歩み去る人々』という小説があります。豊かで幸せな素晴らしい都があるが、それは1人の少年の犠牲の上に成り立って得た繁栄であった、というお話です。

 此処ではない何処か遠い場所に、オメラスと呼ばれる美しい都がある。
オメラスは幸福と祝祭の街であり、ある種の理想郷を体現している。そこには君主制奴隷制もなく、僧侶も軍人もいない。人々は精神的にも物質的にも豊かな暮らしを享受している。祝祭の鐘の音が喜ばしげに響き渡る中、誰もが「心やましさ」のない勝利感を胸に満たす。子供達はみな人々の慈しみを受けて育ち、大人になって行く。
 素晴らしい街。人の思い描く理想郷。しかし、そのオメラスの平和と繁栄の為に差し出されている犠牲を知る時、現実を生きる自分達は気付くのだ。この遥か遠き理想郷は、今自分が立っているこの場所の事なのだと。  


“その子がそこにいなければならないことは、みんなが知っている。そのわけを理解している者、いない者、それはまちまちだが、とにかく、彼らの幸福、この都の美しさ、彼らの友情の優しさ、彼らの子どもたちの健康、学者たちの知恵、職人たちの技術、そして豊作と温和な気候までが、すべてこの一人の子どものおぞましい不幸に負ぶさっていることだけは、みんなが知っているのだ。
..........そして、この幸福に満たされた完璧な理想郷から、時々歩み去る人たちがいる。”

 

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彼らがいるのはやっぱりソクジンが作り出した理想郷なのかな〜と思いました。SpringDayで電車に乗っているジョングクを地上にいるジョングクが見つける描写は今の時点ではよく分かりませんでしたが(思いついたらしれっと加筆します)、とにかく理想郷にいる説が自分の中で濃厚になったのがSpringDayのMVでした。

電車に乗っているのが理想世界に向かっている彼らなのか、それとも理想世界を終わらせようと現実世界に帰っていく彼らなのか、理想世界で遊んでいるだけなのか分かりません。
なんとなーく、EPIROGUEやSpringDayは全てが分かってから観てもいいのかなと思ったりもしています。

とにかく、この理想世界がただの理想世界ならいいのですが、小説のオメラスのようなものであるなら、犠牲になっている人が1人居るということになります。わたしはハッピーな話が好きなので、単に偽物の世界だということを示しているだけだと信じたいです!WINGSの考察を終わります👋