ジグザグ!

WEST SIDE STORY

 

1950年代、アメリカ。ニューヨークのウエストサイドでは、若者たちが集まる2つのギャング、ジェッツとシャークスが戦いを繰り返している。リフをリーダーとし、この地域を支配しているジェッツは、ヨーロッパ系移民の親を持つがアメリカで生まれたいわば「アメリカ人」と呼ばれる白人の青年の寄せ集め。一方ベルナルドを中心に置くシャークスは、いずれもアメリカに移り住んでいるプエルト・リコ人の青年たちだ。縄張り争いが続く中、リフは一刻も早くシャークスとの決着を付ける為、親友トニーに助けを求める。トニーは、かつてリフと共にジェッツを創ったが、1か月ほど前に仲間から離れて今はドクが経営するドラッグストアで働いている。ベルナルドに決闘を申し込む為、今夜体育館で開催されるダンス・パーティーへ一緒に来て欲しいと言うリフの頼みをトニーは断り切れず承諾する。ジェッツのリーダーとしてリフと共に喧嘩に明け暮れていたトニーだったが、彼は最近、何か特別なことが起こる予感がしていた。


表面上ではポーランドアメリカ人の不良少年たちとプエルト・リコアメリカ人の不良少年たちの抗争だけれど、そこには移民問題、人種の違い、差別意識、貧困問題といったものが少年たちの背後に常に渦巻く、そんなお話。

ポーランドアメリカ人のメンバーからなるジェッツは、親は移民ではあるけれども自分たち二世はアメリカ合衆国本土で生まれたということもあり、アメリカ人であるという意識が強いです。
プエルト・リコアメリカ人からなるジェッツは、移民一世にあたるのでしょうか。プエルト・リコはすでにアメリカの一部だったらしいので、アメリカ人ではあるけれど島で生まれているのもあってか「アメリカ人」に対して劣等感のような複雑な感情を抱えているような印象を抱きました。

白人の少年たちからなるジェッツのメンバーたちにも色々な想いを抱えていると思います。「良い社会というのを俺たちは知らない」ような発言もありましたし、このままではいけないとは思ってはいるけれど抜け出す手段が分からないのではないでしょうか。ただ、「この地で生きていかなくてはいけない」という意識に関しては、プエルト・リコから移住してきたシャークスの方がずっと強そうだなという印象です。

現代に置き換えても、移民として移住してきてグリーンカードを得たい人と、アメリカに生まれて生まれながらにソーシャルセキュリティーナンバーが与えられている人とは、同じ場所に暮らしていても全然違いますよね。

人種差別をされるということを知らないマリアやアメリカに夢を抱いて楽しく生きようと希望を持っているアニータの姿は希望に溢れていました。

トニーとの約束の場所に行けなくなってしまったマリアからの伝言を伝えるためにジェッツのたまり場でもあるドクのお店に行ったアニータが、ジェッツのメンバーたちに乱暴されてしまう場面があります。

敵と見なしている肌の黒い人間、敵対しているグループの恋人が自分たちの陣地に入ってきただけでジェッツの少年たちにとっては十分な刺激となってしまい、アニータを取り囲み「肉臭い」といった侮蔑の言葉をかけたり、通して欲しいと頼むアニータに「色が黒すぎて通れません」といった言葉の暴力をかけていくうちに少年たちの制御がきかなくなって暴走していってしまう様がとても生々しかったです。
アニータに乱暴する仲間たちとは別に、耳を塞いで目を瞑り必死にその情景を遮断しようとしているベイビージョンやエニボディーズの姿も痛々しかったですし、何より、アメリカは最高だ夢いっぱいだと踊るアニータの姿を観客は観ていました。それからのこの展開はとてもつらかったですし、見たくないものを突きつけられている気分でした。

最終的にトニーは殺されてしまいましたが、アニータが放った「わたしたちみんなでこの人を殺したの、リフも、ベルナルドも」という言葉はみんなの心に響いたのだと信じたいです。人種差別が無くならなくても、あの場に居たジェッツとシャークスのメンバーの中だけでも意識が変わっていって、彼らの進む未来が少しでも生きやすくなるといいなと願わずにはいられませんでした。