ジグザグ!

BTS『WINGS』シリーズMV考察

WINGS Short Film #1〜#7

ヘルマン・ヘッセ著『デミアン』の一部を参考にしてMVに取り入れていると記者会見でRMが話していたそうです。
BTSがこの『WINGS』で伝えたい主題と『デミアン』が一致していると話していたとのことなので、『デミアン』を理解することで『WINGS』を理解することが出来ます。
ただ、この『デミアン』が何度読んでも理解しきれない作品なので…取り急ぎあらすじだけでも知っておくと良いかもしれません。韓国はクリスチャンが多いので理解しやすいかもしれませんが、わたしは宗教にはサッパリで、宗教も哲学も専門的な学習をしたことがなくて難しかったです。


f:id:zigxzag:20180812163656p:image
f:id:zigxzag:20180812163723p:image
f:id:zigxzag:20180812163750p:image
f:id:zigxzag:20180812163650p:image
f:id:zigxzag:20180812163712p:image
f:id:zigxzag:20180812163700p:image

正直何も分からなかったです!!!!!!!
#4では恐らくユンギとジョングクちゃんが再会した店に突っ込んでいったソクジンの車(断定できないけど)が出てきました。

f:id:zigxzag:20180813160909p:image

#6の絵のEVAは、『デミアン』の作中に出てくる、主人公の友達の母親の名前です。
ソクジンの #7『AWAKE』についてはきちんと観ておこうと思います。

#7の『AWAKE』では特に大切な一節が使われています。これめっちゃ大切だと思いました。

鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う。
卵は世界だ。
生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない。
鳥は神に向かって飛ぶ。神の名はアプラクサスという

 


f:id:zigxzag:20180812163729p:image
f:id:zigxzag:20180812163706p:image
f:id:zigxzag:20180812163718p:image
f:id:zigxzag:20180812163744p:image
f:id:zigxzag:20180812163757p:image

I NEED Uでも観た行動です。やっぱり百合の花を燃やして視界がぐるぐるして苦しんでからカーテンを開けるまでが一連の儀式なのかなと思います。
ぐるぐるしている視界の中に、鎖で閉ざされた棚が見えます。これはTHE NOTESに書いてあった「キャビネット」かもしれません。


f:id:zigxzag:20180812163738p:image

趣味の悪い壁紙(ただの悪口)の廊下を歩いていきます。林檎をもった蛇の悪魔のように見えるので、アダムとイブをそそのかして林檎を食べさせた蛇かな。悪の存在がテーマなので出しただけだと思います。廊下の突き当りに鳥の絵が飾ってあります。これは、アプラクサスに向かって飛んでいる鳥です。他のShortFilmでも出てきましたね。
そして、ここで使われているソクジンの曲の歌詞がソクジンの心情をそのまま表しています。答えは本当に最後に提示されるとは思うのですが、どのような気持ちでいるのかは分かっておきたいです。

もっと夢を見ていたい
それでも離れる時が来てしまったんだ
からだじゅう傷だらけだけど、もがいていたいんだ
多分、僕は 空を飛ぶことはできない
あの花びらたちのように
翼をつけただけじゃダメなんだ
多分、僕は あの空に触れることはできない
それでも手を伸ばしていたいんだ 走ってみたいんだ もう少し
この暗闇の中、ただただ歩いて
幸せだった時間たちが僕に訊ねてくる
お前は本当に大丈夫なのかって
僕は答えた  いや、たまらなく怖いよ
それでも六輪の花を手にしっかりと握りしめて
僕は歩いているだけなんだ

Boy Meets Evil

ホソク先輩が踊りまくってるカムバックトレーラー。ダンスが上手い(あたりまえ)。

Blood Sweat & Tears

今回BTSが伝えたいテーマを主軸に頭に入れて韓国版と日本版のMVを真剣にめちゃくちゃ観たんですけど、まず、今回の主題を汲み取るためには、日本版のMVは二の次にしようと決めました。日本版のMVも韓国版を踏襲してはいるのですが、日本版も考察しようとしてミスリードしました。とはいえ、日本版も何か意味がありそうなのでまた別途考えたいです。

ヘルマン・ヘッセ著『デミアン』概要

デミアンの主人公シンクレールは、正しい両親のものと、同じく正しく生きている姉たちが暮らす家庭=清く美しく明るい世界に生きていました。自分もそう在るべきだという考えを持っていましたが、一方、家の外には悪いもの、汚いもので満たされている真逆の、相反した世界があることも知っていました。

あるとき、シンクレールはひょんなことからいじめに遭うようになります。そんな中、転校してきた不思議な少年デミアンと出会います。

デミアンはシンクレールに、善と悪が統合した世界の存在を教えます。シンクレールはクリスチャンなので、キリスト教が自分にとっての基準でした。しかし、デミアンが教えた善と悪が統合した世界に惹かれます。
そしてシンクレールは、自分自身がどうあるべきかを常に模索して生きるようになります。キリスト教の教えが導いてくれる受け身の考え方から、自分自身で考える方向に変わっていきます。

成長していくうちにシンクレールは "悪い友達" と出会い、酒の味をはじめ、本来経験するはずのなかった世界の住人になります。そしてそれを恐れ、再び両親のいる明るい世界に戻ります。

ある日、シンクレールは少女に一目惚れをし、その少女にダンテの『神曲』から「ベアトリーチェ」と名付けます。そしてベアトリーチェ肖像画を描き始めるのですが、やがてその姿が自分自身に似ていることに気付きます。(自分が目指す理想像が出来たということです。)

シンクレールは夢を見て、夢の中に出てきた鳥を描きます。その鳥の絵をデミアンに送ると、デミアンからの返事にこのようなことが書いてありました。シンクレールが自己実現を目指して進み出したことを示しています。

鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う。
卵は世界だ。
生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない。
鳥は神に向かって飛ぶ。神の名はアプラクサスという


そうしていくうちに、彼は善と悪のどちらも持ち合わせた神・アプラクサスを求めるようになります。
成長したシンクレールはデミアンに再会し、デミアンの母・エヴァの会合に参加するようになります。そしてエヴァに自分が到達したい自己実現を確立した姿などを見出し、彼女を愛するようになります。

ロシアとの戦争が起こり、シンクレールは兵士として戦争に出向きます。そこで偶然にもデミアンに出会います。デミアンは、これからは君が僕を必要としても会いに来られない。自分の中から出てくる言葉に耳を傾けろということと、エヴァから渡されていたのものを渡すと言ってシンクレールにキスをします。最終的にシンクレールは、キリスト教から教わって得た価値観、デミアンエヴァから教わって得た価値観、途中で登場するピストリウスから教わって得た価値観を超えて、自分自身にしか考えることのできない価値観を得て、自己実現するに至りました。

MVを観る上でのポイント

  • ギリシア神話がオマージュされている
  • デミアンがオマージュされている
  • デミアンの主人公「シンクレール」は敬虔なクリスチャンである
  • キリスト教の宗教観も考慮する
  • テヒョンの役割はキリスト教で言うと悪
  • ホソクの役割はキリスト教で言うと善
  • 他メンバーは悪を知ったことを表現しているだけで悪に堕ちたわけではない
  • 善悪が混じった世界であるべきだという考えがデミアンで描かれている
  • 今いる世界から飛び立つ少年の葛藤をBTSが伝えたい

以上のことをポイントに観ていきます。

Blood Sweat & Tears MV考察

一見、テヒョンが悪魔でみんなが陥落していってソクジンも悪に染まって壊れてしまった、ような流れにも見えるのですが、BTSが伝えたいこととデミアンがリンクしているということなので、わたしはそうではないと思っています。わたしの解釈を書いていきます。
    
ソクジンはデミアンの主人公であるシンクレール、ホソクは善の概念、テヒョンは悪の概念を表していて、また、ユンギ、ナムジュン、ジミン、ジョングクはそれぞれ知らなかった悪の世界を知っていくこと、成長における過程で出くわす様々な誘惑に遭うことの象徴に思えました。

ナムジュンは禁断の酒・アブサンを飲み、煙草の煙のようなものを吐いています。ユンギはジミンを誘うような行動をして、目隠しをされたジミンはそれに抗おうとしますが結局享受します。ジョングクはナムジュンが指に垂らした蝋を口に含みます。また、自身の能力を過信して神に対抗して墜落していくイカロスを模し、また、ナムジュンと同じ部屋で怠惰にベッドに横たわる姿も見受けられます。

しかし、MVではこれらのことを「メンバーが悪に染まった」と表現したいというよりは、「善と相反する世界の存在がある」「善と相反する世界を知ること」ということをメンバーを通して表現しているのだと思います。ソクジンの目を覆う5人の手がありましたが、これらの手はソクジンがもう1つの世界を知らないように守ってもいるようにも見えるし、反対に、成長における過程を邪魔をしているようにも思えました。

f:id:zigxzag:20180811195859p:plain

 

最後に、テヒョンに目隠しをされたソクジンの視界が再び開かれると、黒い羽根が生えた像が現れて、ソクジンはその像に近づいてキスをします。


f:id:zigxzag:20180811202322p:plain

f:id:zigxzag:20180811202449p:plain

f:id:zigxzag:20180811202400p:plain

この像は黒い羽根のインパクトによって悪魔にも見えるのですが、身体が白いことから、善と悪が統合された存在だと思いました。悪の像であるならば、冒頭に出てきた悪の像のように、身体も黒いのではないかと考えたからです。
善でもあり悪でもある像にキスをすることで、ソクジンはシンクレールのように、善も悪も包括した世界を知ったのです。ソクジンはこれからまた、自己を確立していくために進むのです。右側の顔がひび割れているのは、ソクジンが自分(卵)の殻を破ろうとしていることを表しているのです。

このMVでは様々な要素を混じえつつも、少年が殻を破り、自分自身のために成長しようとする過程を描いているという、非常にシンプルな観方をすることで、一見複雑そうなMVも自分なりの解釈に落とし込むことができました。

絵画/彫刻/オマージュ

MVには絵画/彫刻/数々のオマージュが散りばめられていますが、見つけたら楽しい!ってオマケ要素を見つけたテンションでいいと思いました。でないと頭がパンクするので…。

ピーテル・ブリューゲル『叛逆天使の墜落』

f:id:zigxzag:20180811195847p:image

美術館に来たみんなは各々きゃっきゃしてるのですが、ソクジンだけある絵画の前で立ち止まります。絵画はピーテル・ブリューゲルの作品『叛逆天使の墜落』。

ブリューゲルアントウェルペンを拠点に活動していた36歳頃の作品である。本作はキリスト教の世界観に基づく宗教画であり、高慢や嫉妬のために神に逆らい、天界を追放された叛逆天使(堕天使)達と、それを追い払う大天使ミカエルに率いられた天使の軍勢との戦いを描いた作品である。この主題そのものは伝統的な画題で、従来は天使を強調して善の圧倒的勝利を描くものであったが、ブリューゲルの本作は混沌とした画面構成で乱戦の様相を呈し、善と悪、美徳と悪徳のせめぎ合いを描いたものとなっている。 ーWikipediaより引用

この辺りはね、聖☆お兄さんで読んだから知ってる!ミカエルかわいいです。これから描かれるのはこの絵画の主題になぞられています。

悪と善の像

f:id:zigxzag:20180811202354p:image

ちょっと遠いんですけど、奥の方、左側に悪を表現したような像、右側に善を表現したような像があります。左の像は、#7 AWAKEで出てきた趣味の悪い壁紙に似てます。

ピエタ

f:id:zigxzag:20180811202455p:plain

ホソクの背後にあるのはピエタ像です。ホソクは弓を構えていて、テヒョンに向かって射るシーンがあります。ギリシア神話に出てくる英雄ヘラクレスを彷彿とさせます。
キリスト教的に考えるとホソクは天国側の善の役割を担っていて、テヒョンは地獄側の悪の役割を担っているのかなと思いました。

ピーテル・ブリューゲルイカロスの墜落のある風景』

f:id:zigxzag:20180811202538p:plain

テヒョンが腰かけていたテラスにあるこの絵画はピーテル・ブリューゲルの作品『イカロスの墜落のある風景』。

最後の晩餐

f:id:zigxzag:20180811202526p:image

最後の晩餐を思わせる場面。空がキモい。NIRVANAのHeart-Shaped BoxのMVみたいです。NIRVANAのMVにもキリスト出てきたなぁ。
最後の晩餐といえばユダの存在じゃないですか。ユダは一般的には「裏切り者」「悪い人」ですよね。この座り方関係あるのかなーって思って、ダ・ヴィンチの絵画は横一列なのでうーんってなってなりながら他の絵画を探しました。
ジョット・ディ・ボンドーネが描いた最後の晩餐が横一列じゃなかったので、ユダの位置を見てみました。

f:id:zigxzag:20180812001611j:plain

背中を向けて座っている人たちのうち、一番左側の黄色い服を着ているのがユダです。

f:id:zigxzag:20180812002336j:plain

f:id:zigxzag:20180812002358j:plain

ユダが座っている位置にテヒョンが座っていました。偶然かな〜とも思うんですけど考えて座らせてたら面白いな〜と思いました。

イカロス

f:id:zigxzag:20180811202341p:image

天才。
ジェイコブ・ピーター・ゴーウィーの作品『イカロスの飛行』でのイカロスのような体勢になってます。

f:id:zigxzag:20180812004105j:plain

 

ピストリウス

f:id:zigxzag:20180811195841p:image

ピストリウスというのはデミアンに登場し、主人公のシンクレールが成長していく過程で、シンクレールを導く役割を担っていた人物で、オルガン奏者でした。ユンギが悪サイドというわけではなく、シンプルにデミアンのオマージュだと思います。ユンギの導きにより、もう少しでソクジンが善と悪が包括された世界を認識します。

ニーチェの一節

f:id:zigxzag:20180811195835p:image

ソクジンが向かった鏡の上に書かれている文章はニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』からの一節 "踊る星を生むことが出来るためには、人は自分のうちに混沌を持っていなければならない。" です。
自己実現のためには善悪が入り混じった世界を知り生きるべきである、みたいな哲学の思想ですね。

SpringDay

抽象的で分からなかったのですが、ひとつ、この世界で出てきた『Omelas』というワードが気になりました。
『オメラスから歩み去る人々』という小説があります。豊かで幸せな素晴らしい都があるが、それは1人の少年の犠牲の上に成り立って得た繁栄であった、というお話です。

 此処ではない何処か遠い場所に、オメラスと呼ばれる美しい都がある。
オメラスは幸福と祝祭の街であり、ある種の理想郷を体現している。そこには君主制奴隷制もなく、僧侶も軍人もいない。人々は精神的にも物質的にも豊かな暮らしを享受している。祝祭の鐘の音が喜ばしげに響き渡る中、誰もが「心やましさ」のない勝利感を胸に満たす。子供達はみな人々の慈しみを受けて育ち、大人になって行く。
 素晴らしい街。人の思い描く理想郷。しかし、そのオメラスの平和と繁栄の為に差し出されている犠牲を知る時、現実を生きる自分達は気付くのだ。この遥か遠き理想郷は、今自分が立っているこの場所の事なのだと。  


“その子がそこにいなければならないことは、みんなが知っている。そのわけを理解している者、いない者、それはまちまちだが、とにかく、彼らの幸福、この都の美しさ、彼らの友情の優しさ、彼らの子どもたちの健康、学者たちの知恵、職人たちの技術、そして豊作と温和な気候までが、すべてこの一人の子どものおぞましい不幸に負ぶさっていることだけは、みんなが知っているのだ。
..........そして、この幸福に満たされた完璧な理想郷から、時々歩み去る人たちがいる。”

 

f:id:zigxzag:20180812231121p:image


彼らがいるのはやっぱりソクジンが作り出した理想郷なのかな〜と思いました。SpringDayで電車に乗っているジョングクを地上にいるジョングクが見つける描写はよく分かりませんでしたが、とにかく理想郷にいる説が自分の中で濃厚になったのがSpringDayのMVでした。この理想郷がただの理想郷ではなく、オメラスのようなものであるなら、犠牲になっている人が1人居るということになります。単に偽物の世界だということを示しているだけだと良いのですが…ということでWINGSの考察を終わります👋