感想:星組『ベルリン、わが愛/Bouquet de TAKARAZUKA』大劇場公演

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サイレント映画からトーキーへと移り変わる頃──。
1920年代から30年代にかけて、ハリウッドと並ぶ映画の都として栄華を誇ったドイツ・ベルリンにも、ナチスが暗い影を落とし始めていた。
そんな中、新しい娯楽作品を模索する男達は、ミュージカル映画こそ大衆が求めるものだと確信し、その実現へ向けて邁進していた。
無名の踊り子を抜擢し撮影された映画は大成功を収める。しかし、プロパガンダとして映画を利用しようとするナチスの圧力は強まる一方だった。
理想と現実の狭間で苦悩しながら、映画を愛した彼らが描いたシナリオとは…。

 

ベルリン、わが愛

UFA(ウーファ)という映画会社が『メトロポリス』という映画を作るも、大衆に受け入れられずにUFAは大赤字。そんな中、映画プロデューサーのカウフマン(七海ひろきさん)に助監督であるテオ(紅ゆずるさん)が自分に映画を作らせて欲しいと頼み込む。サイレント映画が主流な中、大衆向けのトーキー映画を作ってヒットさせてみせますというテオの熱意に負けてカウフマンは映画作りを許可する。
のちのテオの恋人となるジル(綺咲愛里さん)を始めとしたキャストも揃って制作した『忘れじの恋』は大ヒット。
UFAの幹部たちの喜びもつかの間、この作品のヒットだけじゃ倒産の危機は変わらない。実業家・フーゲンベルグ(壱城あずささん)に会社を売却しようという話も出る中、彼はナチスと繋がっていることを理由に反対するカウフマン。
一方、フーゲンベルグとナチス宣伝全国指導者ゲッベルス(凪七瑠海さん)も『忘れじの恋』を目にしていた。結局UFAはフーゲンベルグに会社を売却。後にゲッベルスプロパガンダとして政治利用のための映画作りを強要する。
映画で戦うことを決めたテオたちは、制作中にナチス軍から制止されるも強行する。ドイツでの立場が危うくなったテオは、ジルを連れてハリウッドへ旅立つ。

という感じのお話です。結構淡々と進んでいくし単純なストーリーだし何も難しいことは無いので初見でもパニック起こさずに観れるお芝居です。

ただ、個人的には登場人物たちの年齢や時間の流れがいまいち把握しづらかったかな…。テオたちが作った映画『忘れじの恋』がヒットして以降、 ナチス政権が映画界に関わってくるまでどのくらいの年月が経っているのか分からない。
テオたちの見た目も口調も映画作ったときから変わってないし、そもそもテオたちって何歳くらいの設定なのかも分からない。せめてテオにヒゲ生えるとかしてくれたら分かりやすいんだけど… 。

ジルはドイツを代表する有名女優になっているみたいなんだけど、 『忘れじの恋』がヒットしてからすぐにスターダムに駆け上がってそんなに時間が経っていないのか、それとも3年くらいは経ってるのか分からない。ジルが有名女優になることについては、年月が経ってなくても不思議ではないんだけど、映画出演を拒んだ当時人気ベテラン俳優のヴィクトール・ライマン(天寿光希さん)が「今は落ち目の俳優だ」って言ってて、そんな1年そこらで落ち目の俳優、にはならないのでは?って思うから何年か経ったんだろうけど、 でもみんな変わってないしーーー!?…な感じです。

というわけで個人的にお気に入りのシーンやこまごましたことを書いていきます。

お気に入りのシーン

  • メトロポリスのワールドプレミア試写会シーン
    お芝居のオープニングなのですが、幕が上がると、星組生が全員ひな壇に座っていてうれしい。

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    ナチス側のフーゲンベルグとゲッベルスも振り付けちゃんとやってるのso cute…♡『メトロポリス』の上映が始まってから観客が映画を観ている様子、映画の出来の悪さに怒って散り散りに解散するまではみんなこの状態。



    出だしに冒頭シーンが流れます。

  • ロルフの咳払い
    次回出演する映画がポシャってもう映画界から足を洗うんだーって酔っ払ってる若手俳優のロルフ(瀬央ゆりあさん)がカフェに現れるんです。正直「若手俳優」っていう時点で贔屓目で見てしまいます。
    そんなロルフは、昔から声だけはいいんだ!と歌声を披露するのですが、そのときに「ゔん゙↑↑↑!!」って咳払いするんだけど、そのときのロルフがめちゃくちゃ面白くて毎回笑いました。ずるい。あれはずるい。エンドレスリピートしていたい。
    ちなみにふつうのドイツの若者な格好や、貴族の格好、王様の格好の瀬央さんを観ることが出来る。しかも大きいスクリーンに映し出された瀬央さんを眺めることが出来る。これはすごい。原田先生はこの大きいスクリーンに瀬央さんを映したかったんだなって思いました。納得の配役です。

  • 長身男役の女装
    ジョセフィン・ベーカーのレビューシーン、ついに星組が誇る超美形若手男役の拓斗れいがレビューガールとして借り出されましたね!!!美しすぎました。

  • 方針は一緒でも女の好みは分かれるナチスサイドメンズ
    テオたちが制作した『忘れじの恋』にはヒロイン役にレーニ(音波みのりさん)、花売り役にジル(綺咲愛里さん)のふたりの女性キャストが居るんだけど、大実業家のフーゲンベルグとナチス宣伝全国指導者ゲッベルスが『忘れじの恋』を観たときに、見事にレーニ派かジル派かに分かれてて、方針は一緒なのに女の趣味全然違って何か笑ってしまった…。ちなみにわたしは…ジル派!あーちゃん可愛いんだもんね!

  • 幹部集会が完全にアウトレ◯ジ
    UFAの幹部が集まって経営について話し合うシーンがあるのですが、星組男役上級生×スーツの組み合わせのせいで完全にアウ◯レイジでした。星組でアウトレ◯ジ演って欲しいわたしは歓喜しました。

  • タイミングが良すぎる執事
    ゲッベルスがジルを自分の執務室に呼び出して迫るシーンがあるのですが、ジルをデスクに押し倒して服を脱がせようとしたところで、あまりにも良すぎるタイミングで執事(朝水りょうさん)が「旦那様ー!」ってテオと一緒に飛び込んで来るんですけど、いや、ちょっと、そこで入ってくるとか!ってなって気まずさがすごい。朝水さんはどうやら同期にやり取り聞いてただろと言われているようです(笑)。

  • ナチス親衛隊による銀橋パフォーマンス
    本当に終盤のシーンなのですが、テオたちが抵抗しながら映画を撮影している場面で、ナチスの親衛隊が客席から走ってきて銀橋に上がって踊るんですけど、格好良いです!
    銀橋パフォーマンス以外にも、ナチス親衛隊が出てくるシーンはダンスの振り付けも格好良くて大好きです。

  • 楽曲が素敵
    全編を通して言えることなのですが、楽曲が好き。メトロポリス上映シーンで歌う「ワールドプレミア」、テオが歌う「光と影の中に」、ジョセフィン・ベーカーがレビューで歌う「魅惑の花」、エーリッヒがルイーゼロッテを想って歌う「Ich liebe dich」とか、メロディーラインが綺麗だし気に入りました。

 

印象に残った役者

  • 壱城あずささん/アルフレート・フーゲンベルグ
    スカピンのデュハーストを演じられてから、落ち着きつつも熱さを持った男性としてのお芝居がとても似合うな~と思っていて、 阿弖流為での鮮麻呂のあまりのハマりっぷりと熱演が忘れられなくて、 今回はどんなお芝居をするんだろうなと楽しみにしていました。
    今回もとても素敵で、 渋くて狡猾そうな権力者を落ち着きつつも熱演されていました。こんなお芝居が出来る人だったのかと思うと退団されてしまうことを惜しく感じてしまいました。

  • 天寿光希さん/ヴィクトール・ライマン
    その渋い声どこからどうやって出してんの!っていう(笑)。 元々ハスキーボイスめではありますが、いつもよりずっと渋いお声のイケオジでした。
    若手俳優が主演の映画に出るなんて!と出演を断ったりと、一見プライドが高そうなのですが、性格的なプライドの高さというよりは、映画屋・成り上がってきた役者としてのプライドの高さであることがお芝居の様子から窺えました。付け髭に見えなかったな~直に生えてるよ、あの渋さは(笑)。

  • 夏樹れいさん/ジョセフィン・ベーカー
    レビューシーンで歌声を堪能できます。こういう歌い方出来るんだあ、すごいなあって尊敬しちゃいました。ジョセフィン・ベーカーは、その実力が高く評価された実在の人物ですが、一方、黒人差別に非常に苦しめられるという女性。
    お芝居の中でも、主人公のテオに映画出演を頼まれるも黒人だからと断っていました。「私は舞台の上で戦い続けたいの。たった一人の黒人として。」と意志の強い目をして言っている所が夏樹さんにぴったりで大好きなシーンです。
    夏樹さんも今作で退団してしまいます。あまりにも惜しい人材が去ってしまうんですよね。お芝居のラストシーンで、センター寄りの下手側で車掌さんとして出演されているんですけど、出発時間になると笛を鳴らして敬礼して車輌に乗り込んで姿が見えなくなるんです。その様子を見て毎回泣きました。本当に素敵な舞台人です。

  • 凪七瑠海さん/ ヨーゼフ・ゲッベルス
    専科に移られてからの初のご出演、おめでとうございます!(届かぬお祝い)カチャさんをご贔屓にされているファンの方もおめでとうございます! (届かぬお祝い)
    専科の方が出演すると嬉しいって思う公演もあるけれど、「この役だったら組子が十分に出来るんじゃないかな」って思ってしまう公演もあって、専科って扱いが難しそうだな…と思うのですが、カチャさんは星組の不得意な部分、弱い部分を補って舞台のクオリティの底上げをはかるという専科としての役割を完璧に果たしてくださっているような感じがしました。ウエメセな表現になってしまって申し訳ないですが!

 

Bouquet de TAKARAZUKA

お芝居もショーも、初めて観たとき、とても退屈に感じてしまって終わったあとしんどいですって東京組の友人に泣きの報告をしました。2回目以降はなんとなく慣れてきた感が…。

わたしはあまり昔の曲とかよく存じ上げなくて、目玉とされているセ・マニフィークは今回初めて聴く曲でしたし、感覚的には現代風の新しいショー(お芝居もですが)を観たいと思っているタイプなので「古き良き宝塚のクラシカルなレビューです、懐かしいでしょ!」という今回のコンセプトに最初は感覚が合わなかったのかもしれないです。
セ・マニフィークは初めて聴きましたが良い曲ですね。

好きな場面は、中詰め後の瀬央っち(瀬央ゆりあさん)、しどりゅー(紫藤りゅうさん)、ぴーすけさん(天華えまさん)のトリオが銀橋渡りする「サ・セ・ラムール」ですね!格好良いんですよ…瀬央っちが…!
あと新人公演主演とか経験詰んでる御蔭か、やたらと落ち着いていて貫禄さえも感じるぴーすけさんが、好きです!

カチャさんが歌う「花夢幻」も大好きです。カチャさんは、セリフも歌も発声が、上手く言えないのですが舞台用の発声みたいな印象を受けて、とても聞きやすくて耳触りが良かったです。
専科に移った際、ニューヨークに留学していたようなのでそのときに習得したスキルを満を持して発揮してくださった感じなのかな…。

男役の群舞が無いことは前情報で聞いてて残念に思っていたのですが、代わりになる男女の群舞っぽい場面があって、そのときの曲が格好良くて好きです。ロケットは102期生の奏碧タケルくんをよく観るようにしてます。

今回のショーは本来ならば琴ちゃん(礼真琴さん)が今まで担っていた歌の量をカチャさん(凪七瑠海さん)が少し負担しているような印象を受けました。
礼さんは二番手なので当然なのかもしれないですが、他の組の95期と比べて琴ちゃんに結構負担かかってるよな〜と思っていたので、今回くらいの配分は観ていて安心できました。

 

さいごに

今回の舞台は、星組オンリーやトップコンビのファンというタイプは大丈夫だと思うのですが、他の組のお芝居やショーも観ている方の中には、正直微妙だと感じるかもしれません。というのもわたしがそうなので…。贔屓や好きな役者が居るので観るけど居なかったら観てないと思います。ごめんなさい。

「ベルリン、わが愛」は、今の星組が出来るお芝居、いわば星組自体に当て書きしたような作品のように感じました。原田先生の「美しい人間たちを美しく魅せるために正しい役割を与えて正しい所で正しく使って美しい舞台にしたい」というこだわりもうかがえる舞台でした。

 

ベルリン、わが愛
作・演出 ▶ 原田諒
Bouquet de TAKARAZUKA
作・演出 ▶ 酒井澄夫

公  演 ▶ 2017/9/29〜11/6
劇  場 ▶ 宝塚大劇場



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